青函連絡に新たな転機、津軽海峡フェリーの挑戦
本州と北海道を結ぶ、日本の大動脈は、決して鉄路に限ったものではない。津軽海峡フェリー株式会社は、その動脈を旅客、貨物ともに海路で支えている。函館と青森との交通連絡は長い歴史があり、新たな転機が訪れようとしている今日、同社の挑戦と使命を取材した。(北山創一朗・坪田岳穂)
(津軽海峡フェリー函館ターミナル お土産店やレストランなどが備わっている。)
津軽海峡フェリーは、現在函館―青森間を結ぶ津軽海峡ロード、函館―大間間を結ぶノスタルジック航路の2航路を運航しており、津軽海峡ロードに至っては、運航率99.4%(過去4年平均)という安定性をもって運航している。同航路は片道の所要時間が3時間40分となっているものの、中距離航路と同サイズの船舶を使用しているため、天候の影響を受けにくいという。「北海道・本州間の最短ルートを結び、人と車、あなたの安心を、24時間運び続けることが私たちの使命です」こう同社の社会的責任を語るのは、同社管理部の久保真奈美氏(24)だ。ノスタルジック航路に於いては地域住民の足となっている航路でもあり、同社は公共交通機関としての責任を忘れない。さらには、内装の強化、ボーディングブリッジ、自動出札機などといった利便性を向上させるための設備投資を行うなど、サービス向上にも抜け目がない。日々の点検や巡検、運航管理などを通して安全面にも最善の気を配っている。
(津軽海峡ロードで使用される4隻は全て同じ設備となっている。写真は津軽海峡ロードに使用されているブルーハピネス。ターミナルから直接乗船できるボーディングブリッジが接続しているのがわかる。)
青函連絡の歴史は、青函トンネルが完成される前の青函連絡船に始まり、現在の北海道新幹線開通に至るまで様々な変遷を遂げてきた。2016年には、北海道新幹線が開業、2030年には札幌延伸がはかられる予定である。高速鉄道が北海道本州間で建設される中、「新幹線に対抗するのではなく、共存する意識を持つ」と同社管理部の角田和弘氏(34)は語る。北海道新幹線札幌延伸をきっかけに、函館という地域が通過点になってしまうという懸念点は、地域住民、地方自治体が一丸となって打破しなければいけないなか、同社は、フェリー、新幹線双方を用いる観光パッケージ等の販売、また北海道・青森の魅力ある情報を掲載したフリーペーパー「Tug」の発行を通じて道南地域の観光促進に力を注いでいる。新型コロナウイルスの影響を受けている現在、コロナ禍以前の旅客数に戻すことも同社の課題だという。
(特別に船橋に入らせてもらった。船橋からの景色は絶景そのもの。)
津軽海峡フェリーは、旅客、貨物を安全に輸送するとともに、有事の際には、北海道―本州間を結ぶ最後の砦としての位置づけとなり、長い歴史を歩んできた。同社の挑戦はこれからも続いていく。「我々社員が生き生きと主体的に考え行動し、地域に愛される企業づくりをすることによって、津軽海峡フェリーっていいよね、とお客様に言われる企業を目指しています」久保氏と角田氏は同社の今後の目標をこのように述べ、同社と地域の未来を明るく照らした。
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