市民創作「函館野外劇」が今年も開催、その裏に隠されたストーリー

「星の城、明日に輝け」75分の大スペクタクル、市民創作函館野外劇が新型コロナ対策を徹底し、2022年7月10日、函館市内の五稜郭公園で開幕した。同劇は、8月14日までの毎日曜日、五稜郭公園と、函館市芸術ホールの2会場で開催予定だ。観劇には、チケット購入が必要で、同劇の公式ホームページから予約ができる。


「郷土の歴史を劇にして、次の世代につなげる」ことを目的に函館に住む有志市民が集い、函館の歴史を劇にする同劇は、作成から演技まで函館に住む市民によって毎年営まれてきた。函館の在住期間が長い市民だけにとどまらず、函館に転居してきた市民も一緒に参加している。

同劇の歴史は古く、1986年、五稜郭が函館市の中心地ではなかった時代、景気が悪かったため、市民は地域おこしに難を覚えていた。そこで、当時函館にいた、フランス出身のグロード神父に市民が、「新しい事業を展開しようと思うがどうすれば良いか」を訪ね、「郷土を劇にしよう」とのアドバイスを受けて始まった。グロード神父は、故郷フランスでも同じような策で地域活性化に成功していた。このような働きかけによって、五稜郭地帯も徐々に活性化され、その伝統は34回目を迎えた今年まで続いている。今年の函館野外劇を見た、神奈川県出身の20代女性は「地域の人の温かさや街の活気ある雰囲気を感じた。」と語った。また、市外在住のファンもおり、札幌市在住の60代女性は、「野外劇は2回目、ダンスやセリフにこだわっていて見応えがあった」と語った。

 この、函館野外劇を全面的に支えるのは、1999年7月にNPO法人となった「函館野外劇の会」だ。「劇を作れるくらい豊富な、函館というふるさとに歴史があることが強みです」こう語るのは、同会事務局長の土谷雅宏氏(68)だ。同会は、開催に向けた企画から、協賛活動、劇当日の裏方作業に至るまで、活動の全面的なバックアップを担っている。

 そんな同劇にとって必要不可欠な同会だが、抱える問題も多い。第一に、会員数の確保だ。その主たる原因は高齢化である。劇に出演する人は、若者も多いものの、裏方陣営は演劇する日にしか仕事がなく、本番まで活躍する機会がないことから、魅力発信に乏しく、若者を集められずにいる。昔は、近隣商店街等で働く人たちが協力してくれたが、一般企業の増加や、働き方の変遷によって、休日労働をしなくなった今日、人員を確保できずにいる。昔は400人ほどいた会員が、現在では200人ほどにまで減少している。第二に、資金力だ。劇を鑑賞するチケット代の他、地域内企業から集める協賛金は同会の重要な収入源だが、新型コロナウイルスの影響で、なかなか集められずにいる。同会の課題は、同劇存続の問題と直結しており、早期改善が求められている。

そんな中でも、パンフレットの配布や、市内小中学校における同劇のワークショップ開催などにより、若者や同劇を知らない人に向けた魅力発信活動を続けている。「街づくりの推進、文化・芸術活動の発展への寄与、子供たちへの社会貢献活動が私たちの使命です」土谷氏は同劇の今後の課題をこのように述べ、笑みを浮かべた。

函館ジャーナリズム

北海道教育大学 函館校の二年生による『地域プロジェクト』という活動の中で、函館市内のニュースをまとめました。

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